ベイズ勉強会 Part 2 ベルヌーイ分布のベイズ推論
ベルヌーイ分布のベイズ推論を実践する
ベイズ勉強会資料は『ベイズ推論による機械学習入門』1を元に、途中式計算をできるだけ省略せずに行ったものです。
問題
今N個のデータ点D={x1,x2,…,xN} (x1,…,xN∈{0,1})が得られたとする。未知のデータ点x∗を予測するためにベイズ推測を行いたい。
この問題が解ければ、コインを投げた時表が出る確率はどの程度かをベイズ推測で評価できるようになる。
モデル構築
D,x∗,μで同時分布を構築する。データ点のとりうる値が2値なので、D,x∗がμをパラメータに持つベルヌーイ分布から生成されているとする。D,x∗,μの関係をDAGで描くと以下のようになる。
よって同時分布は
p(D,x∗,μ)=p(D∣μ)p(x∗∣μ)p(μ)という尤度関数×事前分布の形で書ける。
尤度関数
データ点はベルヌーイ分布から独立に生成されるとしているので
p(D∣μ)=ΠNn=1Bern(xn∣μ)p(x∗∣μ)=Bern(x∗∣μ)と書ける。
事前分布
事前分布p(μ)はμ∈(0,1)を満たすような確率分布である必要がある。これを満たす確率分布に、ベータ分布がある。
Beta(μ∣a,b)=CB(a,b)μa−1(1−μ)b−1ただし,CB(a,b)=Γ(a+b)Γ(a)Γ(b),μ∈(0,1),{a,b}∈R+を満たす.
a,bがベータ分布のパラメータである。
CB(a,b)は正規化されることを保証する係数である。CB(a,b)中のΓ(・)はガンマ関数である。ガンマ関数は自然数に定義される階乗を一般化したものであり、正の実数x∈R+に対して、
Γ(x)=∫tx−1e−tdtと定義される。重要な性質として
Γ(x+1)=xΓ(x)Γ(1)=1を満たし、自然数nに対しては
Γ(n+1)=n!が成り立つ。
ベータ分布を用いることで事前分布p(μ)は
p(μ)=Beta(μ∣a,b)と定義できる。a,bも加えてDAGを描き直すと次のように描ける。
更にa,bを出力する確率分布を考えることもできるが、モデルを複雑化すると計算も煩雑になるのでここまでにしておく。ではa,bの値はどうするのかというと、事前に決めておくことになる。このような変数を、パラメータのためのパラメータということで、超パラメータ(ハイパーパラメータ)と呼ぶ。
まとめ
まとめると、推論のためのモデルは次のように書ける。
p(D,x∗,μ)=p(D|μ)p(x∗|μ)p(μ)p(D|μ)=ΠNn=1Bern(xn|μ)p(x∗|μ)=Bern(x∗|μ)p(μ)=Beta(μ|a,b)事後分布の推論
実際にDを観測した後の事後分布p(μ∣D)を求める。
ベイズの定理を用いて、
p(μ|D)=p(D|μ)p(μ)p(D)={ΠNn=1p(xn|μ)}p(μ)p(D)∝{ΠNn=1p(xn|μ)}p(μ)である。分母は正規化されていることを保証する項であり、分布形状を決めるのは分子の部分であるため3行目では省略している。ベルヌーイ分布もベータ分布も指数部分があり、対数をとると計算が楽になる。
lnp(μ|D)=ΣNn=1lnp(xn|μ)+lnp(μ)+const. (対数化により分母は定数項に)=ΣNn=1ln(μxn(1−μ)1−xn)+ln(CB(a,b)μa−1(1−μ)b−1)+const. (ベルヌーイ分布,ベータ分布の式を代入)=ΣNn=1xnlnμ+ΣNn=1(1−xn)ln(1−μ)+(a−1)lnμ+(b−1)ln(1−μ)+const. (CB(a,b)は対数化によりconst.に吸収)=(ΣNn=1xn+a−1)lnμ+(N−ΣNn=1xn+b−1)ln(1−μ)+const.対数を元に戻すと
p(μ∣D)∝μ(ΣNn=1xn+a−1)(1−μ)N−ΣNn=1xn+b−1でありこれはベータ分布の形である。なお定数項は正規化されることを保証する係数となっている。つまり
p(μ|D)=Beta(μ|ˆa,ˆb)ただし ˆa=ΣNn=1xn+aˆb=N−ΣNn=1xn+bとなる。
したがって、
p(x∗|D)=CB(ˆa,ˆb)CB(x∗+ˆa,1−x∗+ˆb)=Γ(ˆa+ˆb)Γ(x∗+ˆa)Γ(1−x∗+ˆb)Γ(ˆa)Γ(ˆb)Γ(ˆa+ˆb+1)複雑な式になっているがx∗は0か1しかとり得ないことを利用するともっと単純に書ける。
p(x∗=1|D)=Γ(ˆa+ˆb)Γ(1+ˆa)Γ(ˆb)Γ(ˆa)Γ(ˆb)Γ(ˆa+ˆb+1)=Γ(ˆa+ˆb)ˆaΓ(ˆa)Γ(ˆb)Γ(ˆa)Γ(ˆb)(ˆa+ˆb)Γ(ˆa+ˆb)=ˆaˆa+ˆbp(x∗=0|D)=Γ(ˆa+ˆb)Γ(ˆa)Γ(1+ˆb)Γ(ˆa)Γ(ˆb)Γ(ˆa+ˆb+1)=ˆbˆa+ˆbより
p(x∗|D)=(ˆaˆa+ˆb)x∗(ˆbˆa+ˆb)1−x∗=(ˆaˆa+ˆb)x∗(1−ˆaˆa+ˆb)1−x∗=Bern(x∗|ˆaˆa+ˆb)=Bern(x∗|ΣNn=1xn+aN+a+b)と予測分布はベルヌーイ分布の形で書ける。
# パッケージのimport
# 乱数生成のためのパッケージ
using Random
# グラフ描画用のパッケージ
using Plots
# 確率分布の関数を呼び出すパッケージ
using Distributions
# 真の成功確率を0.5と置く
p_true = 0.5
# 0~100までの数列
Ns = 0:100;
# 100回ベルヌーイ試行を行う
Random.seed!(12)
data = rand(Bernoulli(p_true), last(Ns))
# 最初の5回
data[1:5]
# 事前分布をベータ分布で置く。ハイパーパラメータはa=1,b=1とする
prior_belief = Beta(1, 1);
#hide_output
# アニメーションをつけるためにStatsPlotsパッケージをimport
using StatsPlots
# ベイズ推論の進行過程をアニメーションに
animation = @gif for (i, N) in enumerate(Ns)
# 表がでた回数(heads)と裏が出た回数(tails)を計算
heads = sum(data[1:i-1])
tails = N - heads
# 事後確率分布
updated_belief = Beta(prior_belief.α + heads, prior_belief.β + tails)
# 描画用の関数
plot(updated_belief,
size = (500, 250),
title = "Updated belief after $N observations",
xlabel = "probability of heads",
ylabel = "",
legend = nothing,
xlim = (0,1),
fill=0, α=0.3, w=3)
vline!([p_true])
end;
# パッケージのimport
# Load Turing and MCMCChains.
using Turing, MCMCChains
# Load the distributions library.
using Distributions
# Load StatsPlots for density plots.
using StatsPlots
# モデル設定
@model coinflip(y) = begin
# 事前分布
p ~ Beta(1, 1)
# 試行回数N
N = length(y)
for n in 1:N
# 各試行の結果はベルヌーイ分布で決定する
y[n] ~ Bernoulli(p)
end
end;
# HMCの設定
iterations = 1000
ϵ = 0.05
τ = 10
# HMCの実行
chain = sample(coinflip(data), HMC(ϵ, τ), iterations, progress=false);
# 結果のサマリ
p_summary = chain[:p]
plot(p_summary, seriestype = :histogram)
# 解析的に解いた事後分布
N = length(data)
heads = sum(data)
updated_belief = Beta(prior_belief.α + heads, prior_belief.β + N - heads)
# HMCによる事後分布の近似を青で描画
p = plot(p_summary, seriestype = :density, xlim = (0,1), legend = :best, w = 2, c = :blue)
# 解析的に解いた事後分布を緑で描画
plot!(p, range(0, stop = 1, length = 100), pdf.(Ref(updated_belief), range(0, stop = 1, length = 100)),
xlabel = "probability of heads", ylabel = "", title = "", xlim = (0,1), label = "Closed-form",
fill=0, α=0.3, w=3, c = :lightgreen)
# 真の成功確率を赤で描画
vline!(p, [p_true], label = "True probability", c = :red)